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退職金控除・非課税のしくみ

退職金の非課税上限はいくら?2024年改正と計算方法を徹底解説

榎本 達也 / 更新:2026-06-24
退職金の非課税上限はいくら?2024年改正と計算方法を徹底解説
退職金にいくらまで税金がかからないのか、結論から言います。非課税の上限は「退職所得控除額」で決まり、勤続20年以下なら40万円×勤続年数、20年超なら800万円+70万円×(勤続年数-20年)です。退職金がこの金額以下なら、原則として所得税も住民税もかかりません。

私はFPとして13年、退職金まわりの相談を受けてきました。正直に言うと、ここを誤解して必要な申告書を出し忘れ、20.42%も源泉徴収された人を何人も見ています。

この記事では、控除額の計算式、勤続年数別の目安、2024年・令和7年度の税制改正の影響、iDeCo併給や確定申告の要否まで、受け取る前に確認すべきことを順に整理します。

退職金は上限まで非課税になる仕組みとは

退職金の税金はいくら?計算方法を解説【実はほとんどかからない】
退職金の税金はいくら?計算方法を解説【実はほとんどかからない】

「退職金 非課税 上限」と検索したとき、多くの人が探しているのは、この退職所得控除額のことです。退職金がこの控除額以下なら、原則として税金はかかりません。国税庁が明記しています。

退職金にかかる税金の種類(所得税・住民税・復興特別所得税)

退職金にかかる税金は3つ。所得税、住民税、そして復興特別所得税です。

このうち復興特別所得税は、所得税額に2.1%を上乗せするもの。住民税の税率は原則10%です。

ただし、いずれも退職金の全額にかかるわけではありません。控除と2分の1課税を通したあとの「退職所得」に対してかかります。ここが大事なところです。

退職所得控除が非課税枠になる理由

なぜ退職金には大きな非課税枠があるのか。退職金は長年の勤労に対する後払いの性格を持ち、老後の生活資金になる。だから税負担を軽くする配慮がされています。

退職所得は他の所得と合算しない「分離課税」で扱われます。給与やほかの所得と切り離して計算されるため、税率が跳ね上がりにくいのです。

退職所得控除額より退職金が少ないと非課税になるケース

退職金が控除額以下なら、退職所得はゼロ。税金はかかりません。

たとえば勤続30年なら控除額は1,500万円です。計算式は800万円+70万円×10年=1,500万円。退職金が1,500万円以下なら、原則として非課税になります。

中小企業や勤続年数が長い方だと、控除額のほうが退職金を上回るケースは珍しくありません。私の相談でも「結局、税金ゼロでした」という方は一定数います。

退職金の非課税枠(退職所得控除額)の計算方法

非課税枠の正体は退職所得控除額です。計算式は勤続20年を境に2段階。まずここを押さえれば、自分の上限がすぐ出せます。

退職金の非課税枠(退職所得控除額)の計算方法

勤続年数20年以下と20年超の計算式

退職所得控除額の計算式(2024年時点)
出典:国税庁 No.1420
勤続年数控除額の計算式
20年以下40万円×勤続年数(最低80万円)
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

勤続10年なら40万円×10年=400万円。勤続25年なら800万円+70万円×5年=1,150万円。シンプルです。

勤続2年など短い場合でも、最低80万円は保証されます。

勤続年数の端数は1年未満を切り上げる具体例

見落としやすいのが端数の扱い。勤続年数に1年未満の端数があるときは、切り上げて1年とします。

たとえば勤続20年1か月。これは21年として計算します。控除額は800万円+70万円×1年=870万円。

わずか1か月でも丸ごと1年に切り上がる。退職日を月初にずらすだけで控除額が70万円増えることもあります。地味ですが、効きます。

障害が原因で退職した場合の100万円加算

障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、上の計算で出した控除額に100万円が加算されます。

勤続30年で通常1,500万円のところ、この加算があれば1,600万円。該当する場合は申告書に記載が必要なので、見落とさないでください。

退職金にかかる税額の具体的な計算とシミュレーション

控除額を超えた分にだけ税金がかかります。しかも、その超過分はさらに2分の1にしてから課税。退職所得への優遇の核心がここです。

退職金にかかる税額の具体的な計算とシミュレーション

退職所得は2分の1課税になる基本ルール

退職所得の計算式はこうです。

退職所得 =(退職金 - 退職所得控除額)× 1/2

この退職所得に対して、所得税額は(退職所得×所得税率-速算控除)×102.1%、住民税額は退職所得×10%で計算します。102.1%は復興特別所得税の上乗せ分です。

勤続年数別・退職金額別の手取り早見の考え方

まず控除額を出し、退職金がそれを超えるかを見る。超えていなければ税金ゼロ、手取りは満額です。考え方を表にしました。

勤続年数別の非課税ライン(控除額)の目安
控除額の計算式(国税庁 No.1420)に当てはめた試算。退職金がこの額以下なら原則非課税。
勤続年数退職所得控除額この額まで非課税の目安
10年400万円400万円
20年800万円800万円
25年1,150万円1,150万円
30年1,500万円1,500万円
35年1,850万円1,850万円

勤続30年で退職金1,500万円なら、ぴったり非課税ライン。これを1円でも超えた分にだけ、2分の1課税が始まると考えてください。

勤続5年以下の役員等に対する2分の1課税不適用の特例

ただし、2分の1課税が使えない人がいます。勤続5年以下の役員等が受け取る退職金(特定役員退職手当等)です。

この場合、控除後の金額をそのまま退職所得として扱い、2分の1にできません。短期で役員を退任して高額の退職金を受け取るケースでは、税負担が一気に重くなります。役員の方は要注意です。

「退職所得の受給に関する申告書」と確定申告の要否

「退職金の課税」見直し 論点の一つに浮上、SNSでは「“退職金増税”は間違っている」「ライフプラン崩れる」【Nスタ解説】|TBS NEWS DIG
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私が相談で一番強く言うのが、この申告書を必ず出すこと。たった1枚の差で、源泉徴収の額が大きく変わります。

申告書を出した場合と出さない場合の源泉徴収の違い

申告書を出していないと、退職金等の支払額に対して一律20.42%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。控除も2分の1課税も反映されません。

具体例で見ます。勤続30年・退職金1,500万円の人。申告書を出していれば本来は非課税。ところが出し忘れると、1,500万円×20.42%=約306万円が天引きされてしまいます。

取り戻すには自分で確定申告が必要です。出すだけでこの手間が消える。だから「とにかく出してください」と伝えています。

確定申告が必要になる場合

申告書を出し忘れて20.42%を源泉徴収された場合は、払い過ぎを取り戻すために確定申告をします。

また、退職した年に医療費控除や住宅ローン控除など、ほかの控除を使いたい場合も申告で精算できます。

確定申告が不要な場合

申告書を勤務先に提出していれば、退職金にかかる税金は適正な額が源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。

会社側が控除も2分の1課税も計算してくれる。これが申告書を出す最大のメリットです。

iDeCo一時金と退職金を併給するときの非課税枠の調整

ここを知らずに損をする人が、近年とても増えています。iDeCoの一時金も退職所得として扱われ、退職金と控除枠を共有するからです。

iDeCo一時金と退職金を併給するときの非課税枠の調整

退職所得が複数あるときに控除額が調整される理由

退職金とiDeCo一時金を別々の年に受け取っても、それぞれで満額の控除を使えるわけではありません。受け取る順番とタイミングによって、控除額が調整されます。

控除枠を二重取りさせない仕組み、と理解すると分かりやすいです。

19年ルール・5年ルールの考え方

先にiDeCo一時金を受け取り、その後に会社の退職金を受け取る場合、原則として前年以前19年以内にiDeCoを受けていると、勤続年数の重複期間が調整されます。これがいわゆる19年ルールです。

逆に先に退職金を受け取ってからiDeCoを受け取る場合は、前年以前5年以内かどうかで調整の有無が分かれます。これが5年ルール。

私の実感では、退職金を先に受け取り、5年超あけてからiDeCoを受け取る順番が、控除をフルに使いやすい。ただし制度の細かい条件があるため、受け取り年が近い方は事前にシミュレーションをおすすめします。

一時金で受け取る場合と年金形式で受け取る場合の税負担比較

iDeCoは一時金(退職所得)と年金形式(雑所得・公的年金等控除の対象)を選べます。

一時金は退職所得控除と2分の1課税が使え、税負担が軽くなりやすい。一方、年金形式は公的年金と合算され、受け取り時期によっては税・社会保険料の負担が増えることもあります。どちらが得かは退職所得控除の残り枠次第です。

2024年・令和7年度税制改正と退職金非課税枠への影響

「2024年で何が変わったのか」を気にする方が多いので、ここは正直に書きます。退職所得控除の基本ルール(40万円・70万円・20年区切り)そのものは、2024年時点で維持されています。

2024年・令和7年度税制改正と退職金非課税枠への影響

改正の主な変更点

近年の議論で焦点になっているのは、iDeCoを先に受け取ってから退職金を受け取る際の調整ルール(前述の5年・19年の取り扱い)です。受け取り順による有利・不利を是正する方向で見直しが進められています。

確定した数値の変更点で、出典のあるものに限って言えば、退職所得控除の計算式の根幹は変わっていません。ここは断言します。

改正がいつから適用されるか

税制改正は通常、その年度の法改正を経て翌年以降に適用されます。受け取り予定が改正の境目に重なりそうな方は、適用開始の時期を勤務先や税務署で必ず確認してください。

改正が退職金の手取りに与える影響

影響が大きいのは、退職金とiDeCoの両方をもらう人です。受け取る順番ひとつで控除の使える額が変わり、手取りが数十万円単位で動くこともあります。

会社の退職金一本の人は、控除の基本ルールが維持されている以上、過度に心配する必要はありません。

意外と見落とす退職金の落とし穴と受け取り方の最適化

これが結論です!5年ルールが消えた後に最もお得に退職金を受け取る方法について解説します!
これが結論です!5年ルールが消えた後に最もお得に退職金を受け取る方法について解説します!

税金の話に集中しすぎて、ほかの論点を見落とす人が多い。社会保険料、住民税の徴収方法、会社倒産時の扱い。実務でよく聞かれる順に整理します。

退職金に社会保険料はかかるのか

結論から言うと、一時金で受け取る退職金そのものには、健康保険料や厚生年金保険料はかかりません。これは給与とは性格が違うためです。

ただしiDeCoや企業年金を年金形式で受け取る場合は、公的年金等と合算され、国民健康保険料や介護保険料の算定に影響することがあります。一時金が社会保険料の面でも有利、というのはこの点です。

会社倒産・未払い退職金の税務上の扱い

会社が倒産して退職金が未払いになった場合、実際に受け取った時点で退職所得として課税されるのが基本です。受け取れなかった分には課税されません。

未払賃金立替払制度などで一部が補填されるケースもあり、その性格によって扱いが変わります。該当しそうな方は、受け取った書類を持って税務署や専門家に確認してください。

住民税の分離課税・特別徴収のしくみ

退職所得に対する住民税は、ほかの所得と分けて計算する分離課税。税率は原則10%です。

しかも退職金を支払う会社が、その場で計算して天引きする「特別徴収」が行われます。つまり退職金の住民税は受け取り時に精算済み。翌年にまとめて請求が来るわけではありません。ここは安心していい部分です。

受け取り方を工夫した節税のポイント

私が相談で必ず確認するポイントを3つに絞ります。

退職金の税負担を抑える3つの確認ポイント
ポイント具体的な行動
申告書を出す「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先へ必ず提出し、20.42%の源泉徴収を避ける
勤続年数の端数を活かす退職日を調整し、1年未満の端数を切り上げて控除額を増やせないか検討する
iDeCoとの受け取り順退職金とiDeCoの受け取り年をずらし、控除枠を二重で使えるよう順番を設計する

このうち効果が一番確実なのは申告書の提出。次がiDeCoとの受け取り順の設計です。端数の調整は会社都合で動かせない場合もあるので、できればやる、くらいの位置づけです。

退職金 非課税 上限に関するよくある質問

相談現場で実際によく受ける質問を、3つに絞って答えます。

退職金 非課税 上限に関するよくある質問

よくある質問

退職金の非課税の上限とは何ですか?
退職所得控除額のことです。勤続20年以下なら40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超なら800万円+70万円×(勤続年数-20年)。退職金がこの金額以下なら、原則として税金はかかりません。たとえば勤続30年なら1,500万円までが非課税の目安です(国税庁 No.1420)。
退職金で実際にかかる費用(税負担)はいくらですか?
控除額を超えた分にだけ課税されます。退職所得=(退職金-控除額)×1/2で求め、これに所得税(×102.1%の復興特別所得税込み)と住民税10%がかかります。控除額以下なら負担はゼロ。控除額を超える人だけ、超過分の半分に税率がかかる、と考えてください。
非課税で受け取る手続きはどう始めればよいですか?
まず勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。これを出せば控除と2分の1課税が反映され、原則として確定申告も不要です。出し忘れると20.42%が源泉徴収されるので、退職金を受け取る前に必ず提出してください。

最後にひと言。退職金の税金で損をする人の大半は、知識不足ではなく「申告書の出し忘れ」です。受け取る前の今、その1枚を勤務先に確認する。これだけで、ほとんどの落とし穴は避けられます。

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榎本 達也

榎本 達也

2級ファイナンシャル・プランニング技能士 ・ 地方銀行での個人資産相談業務12年

元銀行員・現FPとして、退職金や年金まわりの税務を中心に相談業務と記事執筆を行っています。制度の条文や国税庁の通達を直接確認しながら、読者が実際に使える情報だけを届けることを心がけています。

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