退職金 勤続20年以上の控除額は?計算式と早見表で徹底解説

20年までは1年あたり40万円。20年を超えると1年あたり70万円に増えます。だから長く勤めた人ほど税金の面で得をする仕組みです。
この記事では、計算式の意味、勤続年数別の控除額早見表、実際の税額と手取りの出し方、そして一時金か年金かの選び方まで、私がFP実務で使っている順番で整理します。自分の控除額をその場で計算できるはずです。
退職金の勤続20年以上の控除額とは?まず結論

退職金には「退職所得控除」という大きな非課税の枠があります。勤続20年超なら、800万円に加えて20年を超えた1年ごとに70万円が積み上がる。これがこのテーマの核心です。
国税庁のタックスアンサーでも、20年超の計算式は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」と明記されています。
退職所得控除の基本的な考え方
退職所得控除とは、退職金のうち税金がかからない金額の枠のことです。退職金からこの控除額を引いた残りに、さらに1/2を掛けてから課税します。
つまり二重に優遇されている。長年の勤労に報いるための制度で、退職金が控除額以下なら退職所得は0、税金はかかりません。
勤続20年を境に控除額が増える理由
20年以下は「40万円×勤続年数」、20年超は1年あたり70万円。なぜ20年で切り替わるのか。長期勤続を後押しする政策的な配慮だと私は理解しています。
数字で見ると差は歴然です。勤続20年の控除額は800万円。ここから1年延びるごとに70万円ずつ増えていきます。
勤続20年以上の退職所得控除額の計算式と具体例
ここが一番大事な部分です。式は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」。この800万円は、20年分の控除(40万円×20年)をまとめた金額です。

計算式「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の解説
たとえば勤続30年。800万円+70万円×(30-20)=800万円+700万円=1,500万円。国税庁の例でも勤続30年の控除額は1,500万円とされています。
退職金が1,500万円以下なら、勤続30年の人は退職所得が0。所得税も住民税もかかりません。私が相談現場で「思ったより税金が安い」と驚かれるのは、たいていこの控除の大きさが理由です。
勤続年数の端数処理(1年未満は切り上げ)
勤続年数に1年未満の端数があれば切り上げます。たとえば勤続20年3か月なら21年として計算します。
この切り上げが効いてくる。20年と1日でも21年扱いになり、控除額は800万円から870万円に跳ね上がります。退職日が年度末ぎりぎりの人は、ここを必ず確認してください。
勤続20年と21年での控除額の差額シミュレーション
20年と21年では70万円も控除額が違います。退職所得は控除後に1/2を掛けるので、課税対象ベースで35万円分の差。たった1年で手取りが変わるのは、知らないと損をするポイントです。
| 勤続年数 | 計算式 | 控除額 |
|---|---|---|
| 20年 | 40万円×20年 | 800万円 |
| 21年 | 800万円+70万円×1年 | 870万円 |
勤続年数別の控除額早見表
自分の勤続年数を当てはめやすいように、20年超の代表的な控除額を一覧にしました。すべて「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で算出した数字です。

20年・25年・30年・35年の控除額一覧
| 勤続年数 | 計算式 | 控除額 |
|---|---|---|
| 20年 | 40万円×20年 | 800万円 |
| 21年 | 800万円+70万円×1年 | 870万円 |
| 25年 | 800万円+70万円×5年 | 1,150万円 |
| 30年 | 800万円+70万円×10年 | 1,500万円 |
| 35年 | 800万円+70万円×15年 | 1,850万円 |
障害が原因で退職した場合の100万円加算
障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、上の控除額にさらに100万円が加算されます。勤続30年で障害退職なら、1,500万円+100万円=1,600万円です。
この加算は見落とされがちです。該当する可能性があるなら、退職時に勤務先や税務署へ必ず申し出てください。
退職金にかかる税額の計算方法

控除額が分かったら、次は実際の税額です。退職金は他の所得と合算せず、退職所得として単独で課税されます(分離課税)。給与とは切り離して計算するのがポイントです。
退職所得の金額の出し方
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2。たとえば退職金2,000万円、勤続30年なら、(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円が退職所得です。
この1/2が効くおかげで、課税される金額はぐっと小さくなります。
所得税の計算手順
求めた退職所得に、所得税の累進税率を掛けて税額を出します。退職所得250万円なら、所得税の速算表で計算した金額が所得税額です。さらに復興特別所得税(所得税額の2.1%)が上乗せされます。
具体的な税率区分は国税庁のNo.1420で確認できます。退職金が控除額以下なら、この計算自体が不要です。
住民税の計算方法
住民税も退職所得に対してかかります。税率は10%(市町村民税6%+道府県民税4%)。退職所得250万円なら、おおむね25万円が住民税の目安です。
住民税は退職時に源泉徴収され、通常は確定申告で改めて納める必要はありません。
源泉徴収票の見方と税額の確認
退職金を受け取ると「退職所得の源泉徴収票」が交付されます。ここには支払金額、勤続年数、源泉徴収された所得税額、特別徴収された住民税額が載っています。
私が確認するときは、まず勤続年数の欄を見ます。端数の切り上げが正しく反映されているか、控除額が早見表と合うか。ここがずれていると税額が変わるので、最初にチェックすべき場所です。
確定申告が必要なケースと申告書の有無による違い
退職金の税金で一番つまずくのが、申告書を出したかどうかで税額が大きく変わる点です。これを知らずに損をする人を、私は何度も見てきました。

「退職所得の受給に関する申告書」を出したかどうかで変わる税額
退職時にこの申告書を勤務先へ提出していれば、退職所得控除が適用され、正しい税額が源泉徴収されます。これで原則、確定申告は不要です。
出していないと、退職金額に一律20.42%の所得税が源泉徴収されてしまいます。控除を一切使わない計算なので、本来より多く取られるケースがほとんどです。
確定申告で還付を受けられるケース
申告書を出し忘れて20.42%を引かれた場合でも、確定申告をすれば払いすぎた分が戻ってきます。控除を反映した正しい税額との差額が還付されるからです。
年の途中で退職して他に所得が少ない人も、申告で還付になることがあります。源泉徴収票を見て「多いな」と感じたら、まず申告を検討してください。
2022年改正の短期退職手当等(勤続5年以下)との違い
勤続5年以下の退職金には別ルールがあります。2022年(令和4年)改正で、勤続5年以下の場合、退職所得控除後の金額のうち300万円を超える部分は1/2を掛けられなくなりました。
これは短期勤務で多額の退職金を受け取るケースへの対応です。勤続20年以上の人には関係しませんが、転職が多い人は自分がどちらに当たるか確認しておくと安心です。
複数の退職金やiDeCo・小規模企業共済がある場合の調整
退職金を複数受け取る人や、iDeCo・小規模企業共済を併用する人は、控除の重複に注意が必要です。ここを誤ると控除を二重に使えると勘違いしやすい。

同一年や前年以前に退職金がある場合の調整計算
同じ年に2か所から退職金を受け取る場合や、前年以前4年内(iDeCoなら前年以前19年内)に別の退職金を受け取っている場合は、勤続期間の重複分について控除額が調整されます。
単純に各社の控除を足せるわけではありません。重なった年数は二重に数えられない、と覚えておくと判断を誤りにくいです。
iDeCo・小規模企業共済と同時に受け取るときの重複期間の扱い
iDeCoの一時金や小規模企業共済も退職所得控除の対象です。ただし会社の退職金と勤続期間が重なっていると、その重複期間分は控除を共有する形になります。
だから受け取る順番とタイミングが効いてきます。iDeCoを先に受け取り、数年空けてから会社の退職金を受け取ると、控除を別々に使いやすくなるケースがあります。受給設計は早めに専門家へ相談する価値が大きい部分です。
手取りを増やす受け取り方の比較と注意点

退職金は一時金で受け取るか、年金形式で受け取るかを選べる場合があります。どちらが得かは人によって変わる——これは正直、両論併記では片付けられません。
一時金で受け取る場合と年金で受け取る場合の有利不利
一時金は退職所得控除と1/2課税が使えるのが最大の強みです。控除額が大きい長期勤続者ほど、一時金で受け取ると税負担が軽くなります。
年金形式は受取総額が一時金より多く設定されることがある一方、毎年の年金が雑所得として課税され、社会保険料にも影響します。私の経験では、勤続20年以上で退職金が控除額の範囲に収まる人は、一時金が有利なケースが多いです。
| 項目 | 一時金 | 年金形式 |
|---|---|---|
| 税の扱い | 退職所得(分離課税・1/2課税) | 雑所得(総合課税) |
| 退職所得控除 | 使える | 使えない |
| 社会保険料への影響 | 小さい | 大きくなりやすい |
控除を最大限活かすための受け取り順の工夫
会社の退職金とiDeCoの両方がある人は、受け取る年をずらすのが基本戦略です。重複期間の調整を避けやすくなり、それぞれの控除を活かしやすくなります。
具体的な年数の空け方は加入期間や年齢で変わります。退職の2〜3年前には一度シミュレーションしておくと、選択肢を残せます。
よくある勘違いと損をしないための注意点
一番多い勘違いは「退職金にはどうせ高い税金がかかる」という思い込みです。実際は控除が大きく、勤続20年以上なら無税になる人も珍しくありません。
もう一つは申告書の出し忘れ。これだけで20.42%引かれるので、退職時の書類は必ず提出を確認してください。私が勧めないのは、よく分からないまま年金形式を選ぶこと。控除を捨てる結果になりかねません。
よくある質問(FAQ)
相談現場で繰り返し聞かれる質問を、要点だけ短くまとめました。

よくある質問
自分の勤続年数を早見表に当てはめ、源泉徴収票の控除額と照らし合わせる。まずはこの一手だけでも、払いすぎを防げます。迷ったら退職の数年前にFPへ相談し、受け取り順を設計しておくと安心です。
