退職所得の源泉徴収票とは?見方・計算・確定申告まで徹底解説

ただし、出し忘れや複数受給など、放っておくと損をするケースもある。私はFP実務歴13年、地方銀行で個人資産の相談を12年やってきました。この記事では、見方・計算・確定申告・再発行まで、手元の書類を今すぐ確認できる形で整理します。
この記事で分かること:書類の意味と給与所得の源泉徴収票との違い、退職所得控除と所得税の計算方法、勤続年数の数え方、記入例の見方、確定申告が必要・不要の判断、紛失時の再発行手順。
退職所得の源泉徴収票とは?まずは結論から

退職所得の源泉徴収票は、退職手当等を支払う会社が作成・交付・税務署等へ提出する「法定調書」の一つです。国税庁の手続案内でも、提出対象者は「退職手当等の支払をする者」と明記されています。
退職所得の源泉徴収票の意味と役割
ひと言でいえば、退職金からいくら税金が引かれたかを証明する書類です。退職所得は他の所得と切り離して計算する「分離課税」で、退職の時点で課税が完結します。
分離課税とは、給与や事業の所得と合算せず、退職金だけで税額を計算する仕組みのこと。だから通常は退職の段階で精算が終わり、追加の手続きが要らない人が多いのです。
給与所得の源泉徴収票との違い
名前は似ていますが、中身は別物です。給与所得の源泉徴収票は1年分の給料・賞与をまとめたもの。退職所得の源泉徴収票は、退職金という一回限りの支払いに対する税額を示します。
| 項目 | 退職所得の源泉徴収票 | 給与所得の源泉徴収票 |
|---|---|---|
| 対象 | 退職手当等(退職金) | 1年間の給与・賞与 |
| 課税方式 | 分離課税 | 総合課税 |
| 控除 | 退職所得控除 | 給与所得控除 |
| 1/2課税 | 原則あり | なし |
| 交付時期 | 退職後1か月以内 | 年末調整後・翌年1月など |
交付の対象者と発行のタイミング
交付の期限は明確です。国税庁のQ&Aでは「退職後1か月以内にすべての受給者に交付する」と書かれています。
つまり退職したら1か月以内に手元へ届くのが原則。届かないときは会社の経理に催促していい場面です。
退職所得にかかる所得税の計算方法
ここが一番ややこしく、相談でも質問が集中するところです。退職所得は、勤続年数に応じた退職所得控除を引き、原則として残りを1/2にしてから税率をかけます。

退職所得控除額の計算と勤続年数の数え方
退職所得控除は勤続年数で決まります。20年までは1年あたり40万円、20年を超えた部分は1年あたり70万円。これに退職金から控除を引き、1/2をかけたものが課税退職所得金額です。
| 勤続年数 | 控除額の計算 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
勤続30年なら、800万円+70万円×10年=1,500万円が控除額。退職金が1,500万円以下なら課税退職所得はゼロ、つまり所得税はかかりません。
1年未満の端数や障害退職の取扱い
勤続年数は1年未満を切り上げて数えます。たとえば20年3か月なら21年扱い。たった3か月でも70万円分控除が増えるので、ここは見落としたくないポイントです。
障害が原因で退職した場合は、通常の控除額に100万円が上乗せされます。手元の源泉徴収票で控除額が思ったより多いときは、この加算が効いていることがあります。
短期退職手当等・特定役員退職手当等の計算
勤続年数が短い場合は、1/2課税が制限されます。役員等としての勤続5年以下に対応する退職金(特定役員退職手当等)は、1/2課税の対象外です。
役員以外でも勤続5年以下の退職金(短期退職手当等)は、控除後の額が300万円を超える部分について1/2課税が使えません。短期で大きな退職金を受け取る人は、ここで税額が変わってきます。
「退職所得の受給に関する申告書」を出した場合と出さない場合の差
正直、ここが一番大事です。この申告書を会社へ出していれば、退職所得控除も1/2課税も適用され、適正な税額だけが源泉徴収されます。
出していないと、退職手当等の支払額に対して一律20.42%が源泉徴収されます。控除も1/2課税もなしの計算です。
出し忘れても泣き寝入りは不要。確定申告すれば払い過ぎた分は還付されます。後述します。
源泉徴収票の見方と記入例(実際の数値で解説)
上位記事ではサラッと流されがちですが、実際の数字を当てはめないと自分の書類が妥当か判断できません。ここは具体例で厚めに解説します。

記載項目と各欄の意味
主な欄は、支払金額(退職金の総額)、源泉徴収税額(所得税及び復興特別所得税)、特別徴収税額(住民税)、退職所得控除額、勤続年数。受給に関する申告書の提出有無もチェック欄で示されます。
具体的な数値を使った記入サンプル
勤続30年、退職金2,000万円、申告書を提出したケースで試算してみます。控除額は1,500万円。
| 項目 | 金額・内容 |
|---|---|
| 支払金額 | 20,000,000円 |
| 退職所得控除額 | 15,000,000円(800万+70万×10年) |
| 課税退職所得金額 | 2,500,000円((2,000万−1,500万)×1/2) |
| 勤続年数 | 30年 |
| 受給に関する申告書 | 提出あり |
課税退職所得250万円に所得税率を適用し、復興特別所得税を加えた額が源泉徴収税額欄に入ります。控除が大きいほど、ここの数字は小さくなります。
受給者が確認すべきチェックポイント
私が相談で最初に見るのは3点。勤続年数が正しいか、控除額が年数と合っているか、申告書提出のチェックが入っているか。
特に勤続年数の端数切り上げと、申告書提出欄。ここがずれていると税額が大きく変わります。違和感があれば会社へ確認を。
源泉徴収票の作成・交付・税務署への提出手続き

作成・交付・提出の義務は、退職手当等を支払う側にあります。受給者が自分で作る書類ではありません。
作成と交付の方法
様式名は「退職所得の源泉徴収票(同合計表)」。会社が作成し、退職後1か月以内に受給者へ交付します。
電子交付(e-Tax・マイナポータル連携)での発行と受領
紙だけでなく電子交付も使えます。会社がe-Taxで提出し、受給者へは電子データで交付する流れです。マイナポータル連携を使えば、確定申告のときにデータを取り込める場合もあります。
電子で受け取ると紛失しにくく、再発行の手間も減ります。私は基本、電子受領を勧めます。
税務署への提出範囲と提出が不要な少額ケース
提出先は2か所。税務署と、支払った年の1月1日現在の受給者の住所地の市区町村です。
なお、税務署・市区町村への提出対象は従来限定されていましたが、2026年1月1日以後に支給する退職手当等について提出義務が拡大されると解説されています。これは一次情報ではないため、確定的な範囲は国税庁の最新案内で要確認です。
提出期限と注意事項
税務署への提出時期は「退職の日以後1か月以内」が基本ですが、その年中に退職した受給者分を取りまとめて翌年1月31日までに提出して差し支えない、と案内されています。
受給者本人への交付期限はあくまで退職後1か月以内。ここを混同しないように。
確定申告が必要なケース・不要なケースの判断
多くの人が気になる部分です。結論から言うと、申告書を出していれば原則として確定申告は不要。退職時に課税が完結しているからです。

申告が不要になる基本の考え方
退職所得は分離課税で、適正な源泉徴収が済んでいれば追加の申告は要りません。申告書を提出し、控除と1/2課税が適用されているなら、そのまま完結します。
申告すると還付される可能性があるケース
ここで取り返せる人がいます。受給に関する申告書を出し忘れて20.42%を引かれた人。本来の税額より多く源泉徴収されているので、確定申告で還付されます。
また、その年の給与が少なく所得控除(医療費控除や社会保険料控除など)が余っている人も、申告で退職所得と精算して還付になることがあります。退職金が大きいほど、見直す価値は大きいです。
複数の退職金を受け取った場合の調整計算
同じ年に複数の退職金を受け取ると、退職所得控除を二重に使えません。勤続期間が重なる部分は調整され、控除が圧縮されます。
片方で申告書を出し、もう片方の勤続期間が重複しているケースは、合算して計算し直す必要があります。複数受給は計算ミスが起きやすいので、源泉徴収票を全部そろえて確定申告で整理するのが安全です。
住民税(特別徴収)との関係と計算
所得税の話に隠れがちですが、退職金には住民税もかかります。しかも退職金の住民税は、退職時にまとめて特別徴収(天引き)されるのが原則です。

退職所得に係る住民税の計算方法
住民税も、退職所得控除を引いて1/2にした課税退職所得金額がベースです。そこに市町村民税・道府県民税の税率をかけます。所得税と控除・1/2の考え方は共通しています。
源泉徴収票の特別徴収税額欄に、この住民税額が記載されます。退職時に引かれているので、後から住民税の納付書が来ることは原則ありません。
特別徴収のしくみと天引きの流れ
特別徴収とは、会社が税額を給与や退職金から天引きして自治体へ納める仕組み。退職所得の住民税は、この特別徴収で退職時に完結します。
つまり退職金の住民税は、翌年の請求ではなくその場で精算済み。ここを知らないと「来年また請求される?」と不安になりますが、心配いりません。
源泉徴収票を紛失したときの再発行と困ったときの対処

なくしても再発行できます。確定申告や住宅ローン審査で必要になり、慌てて相談に来る人は毎年います。落ち着いて手順を踏めば大丈夫です。
再発行を依頼する手順
まずは退職した会社の経理・人事へ再発行を依頼します。法定調書として控えが保管されているので、原則として再発行に応じてもらえます。電子交付なら自分のデータを探すのが先です。
退職先と連絡が取れない場合の対応
会社が倒産・連絡不能のときは、税務署に相談してください。会社が税務署へ提出した源泉徴収票の情報をもとに、対応を案内してもらえます。
私の経験では、退職金の振込記録や退職時の通知書が残っていると、税務署での確認がスムーズです。捨てずに取っておくと安心です。
非居住者へ支払った退職手当等がある場合
海外勤務などで非居住者になった人へ支払う退職手当等は、課税の扱いが居住者と異なります。源泉徴収の方法も別ルールになるため、自己判断せず税務署や税理士に確認するのが確実です。
よくある質問(FAQ)と根拠法令・問い合わせ先
最後に、相談で繰り返し聞かれる質問をまとめます。根拠は国税庁の案内に基づいています。

退職所得の源泉徴収票に関するよくある質問
よくある質問
根拠となる法令と参考リンク
本記事は国税庁のタックスアンサー・法定調書手続案内を一次情報として確認しています。提出義務の拡大など改正点は、必ず国税庁の最新案内で裏取りしてください。
手元の源泉徴収票を開いて、まず勤続年数と申告書提出欄の2か所を確認してみてください。そこがずれていなければ、ほとんどの人は何もしなくて大丈夫です。
