退職金の税金はいくらから?勤続年数別の非課税ボーダーと計算方法を徹底解説

勤続年数によってこの非課税のラインは変わります。たとえば勤続3年なら120万円、勤続1年未満でも最低80万円までは非課税です。
この記事では、勤続年数別の非課税ボーダー一覧、退職所得控除と2分の1課税の計算、一時金と年金の比較、iDeCoとの重複調整、確定申告と還付の手続きまで、私がFP実務で実際に使っている順番で整理します。自分の手取りをすぐ確認できるようにしました。
退職金の税金はいくらからかかる?非課税ボーダーの基本

退職金にかかる税金の有無は、退職金額そのものではなく「退職所得控除額を超えるかどうか」で決まります。ここを押さえれば、自分が課税対象かどうかは数分で判断できます。
退職所得控除額を下回れば非課税になる仕組み
課税される退職所得金額は、(退職金-退職所得控除額)× 1/2 で計算します。この値が0以下なら、所得税も住民税もかかりません。
つまり退職金が控除額の枠内に収まっていれば、税金は0円。控除額を1円でも超えた部分の半分だけが、課税の対象になります。
勤続年数別の非課税ボーダー金額一覧
退職所得控除額は勤続年数で決まります。20年以下なら1年あたり40万円、20年超なら超えた分は1年あたり70万円。これを金額で並べると下の通りです。
| 勤続年数 | 退職所得控除額(=非課税ボーダー) |
|---|---|
| 1年未満〜1年 | 80万円 |
| 3年 | 120万円 |
| 5年 | 200万円 |
| 10年 | 400万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 25年 | 1,150万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 35年 | 2,250万円 |
たとえば勤続25年なら、退職金1,150万円までは非課税。これを超えた部分の半分にだけ税金がかかります。短い勤続でも最低80万円は必ず控除されます。
退職金にかかるのは所得税と住民税の2つ
退職金に課されるのは、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税です。住民税は課税退職所得の10%(市町村民税6%+都道府県民税4%)で計算します。
所得税には復興特別所得税が上乗せされます。所得税額の2.1%分です。細かいですが、実際の計算では効いてきます。
退職所得控除額と税額の計算方法
ここからは実際の計算式です。勤続年数の数え方ひとつで控除額が40万円単位で変わるので、端数の扱いを最初に確認しておきます。

勤続年数の端数は1年未満でも切り上げる
勤続年数は1年未満の端数を切り上げます。これがポイント。たとえば「10年1ヵ月」は11年として計算します。
1ヵ月でも超えれば1年分、つまり40万円多く控除されます。私の相談でも、退職日を月初にずらせるか調整して控除額を増やせたケースがありました。
退職所得控除額の計算式(20年以下・20年超)
| 勤続年数 | 計算式 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年) |
勤続11年なら 40万円×11=440万円。勤続25年なら 800万円+70万円×5=1,150万円。この計算が全ての出発点です。
退職所得は2分の1課税が基本
控除額を引いた残りを、さらに半分にできるのが退職所得の優遇です。(退職金-退職所得控除額)× 1/2 が課税退職所得金額になります。
この2分の1課税のおかげで、退職金は他の所得よりかなり軽い税負担で済みます。長年勤めた人への配慮、と私は理解しています。
障害者になって退職した場合の100万円加算特例
障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、退職所得控除額に100万円が加算されます。通常の控除額にプラスして適用されます。
見落とされがちな特例です。該当しそうなら、必ず勤務先か税務署に確認してください。証明書類が必要になります。
勤続年数・退職金額別の税金計算シミュレーション
言葉だけでは分かりにくいので、実際の金額で計算してみます。所得税の速算表(195万円以下5%、195万円超330万円以下10%・控除97,500円など)を使います。

勤続10年1ヵ月・支給額900万円の場合
勤続年数は端数切り上げで11年。退職所得控除は 40万円×11=440万円。
課税退職所得は(900万円-440万円)× 1/2 = 230万円。195万円超330万円以下なので所得税率10%・控除97,500円。
所得税は 230万円×10%-97,500円=132,500円。復興特別所得税2.1%を足して約135,282円。住民税は 230万円×10%=23万円。手取りは控除分を差し引いた残りになります。
勤続25年・支給額2,300万円の場合
控除額は 800万円+70万円×5=1,150万円。課税退職所得は(2,300万円-1,150万円)× 1/2 = 575万円。
575万円は330万円超695万円以下なので税率20%・控除427,500円。所得税は 575万円×20%-427,500円=722,500円。復興特別所得税を足して約737,672円。住民税は 575万円×10%=57万5,000円。
2,300万円もらっても、税金は合計130万円程度。給与所得で同じ額を稼いだ場合と比べると、退職所得の優遇の大きさが分かります。
短期退職手当等(勤続5年以下)の300万円超部分の扱い
令和4年分以降、勤続5年以下の従業員(役員以外)の退職金には注意が必要です。退職金から控除額を引いた残りのうち、300万円を超える部分には2分の1課税が使えません。
300万円以下の部分までは通常どおり2分の1。超えた部分はそのまま全額が課税対象になります。短期で高額の退職金を受け取る人は不利になりやすい、ということです。
役員等で勤続5年以下は2分の1課税が使えない
役員等として勤続5年以下で退職金を受け取る場合は、金額にかかわらず2分の1課税の適用がありません。控除額を引いた残り全額が課税退職所得になります。
短期で就任・退任する役員は、ここでかなり税負担が変わります。自分が役員区分に当たるかは、就任日と退任日で必ず確認してください。
退職金の受取り方で税金は変わる|一時金と年金の比較

退職金は一時金で一括受取するか、年金で分割受取するかを選べる会社があります。税金の扱いが根本から違うので、ここは慎重に。
一時金で受け取る場合の税負担
一時金で受け取れば退職所得になり、退職所得控除と2分の1課税の両方が使えます。前のシミュレーションのとおり、税負担はかなり軽い。
控除枠に収まれば非課税になるのも一時金の強みです。私が相談を受けるとき、まず一時金を基準に考えます。
年金で受け取る場合の公的年金等控除と社会保険料への影響
年金形式で受け取ると、その収益部分は雑所得に分類されます。退職所得の2分の1課税は適用されません。
雑所得には公的年金等控除が使えますが、受取額が他の年金と合算されて毎年の所得になります。所得が増えれば、国民健康保険料や介護保険料が上がる点に注意が必要です。
正直、この社会保険料への跳ね返りは見落とされがちです。税金だけで比べると年金が得に見えても、保険料込みだと逆転することがあります。
一時金と年金どちらが有利かは状況で異なる
| 観点 | 一時金 | 年金 |
|---|---|---|
| 所得区分 | 退職所得 | 雑所得 |
| 退職所得控除 | 使える | 使えない |
| 2分の1課税 | 使える | 使えない |
| 公的年金等控除 | 対象外 | 使える |
| 社会保険料への影響 | 少ない | 毎年の所得増で上がりやすい |
| 運用益 | なし | 受取期間中に上乗せされる場合あり |
退職金が控除枠に収まる、または長く運用に回す予定がないなら、私は一時金を勧めることが多いです。ただし退職金が控除を大きく超え、年金の運用利率が高い制度なら、年金にも合理性があります。
一時金と年金を組み合わせる選択肢
会社によっては、一部を一時金、残りを年金で受け取る併用が選べます。控除枠ぴったりまでを一時金で非課税にし、残りを年金に回す、という調整が可能です。
この併用が一番手取りを最適化できるケースは多い。制度として選べるかどうか、退職前に勤務先の規程を確認しておくと有利に動けます。
iDeCo・小規模企業共済・複数回受取の重複調整に注意
会社の退職金とは別に、iDeCoや小規模企業共済を一時金で受け取る人が増えています。ここで退職所得控除の「重複調整」を知らないと、想定外の課税が発生します。

一時金受取と退職所得控除の重複調整(19年・5年ルール)
複数の一時金を別々の年に受け取ると、退職所得控除を重複して使える年数が制限されます。iDeCoを先に受け取り、その後14年以内(一定要件下では19年以内)に会社の退職金を受け取ると、勤続期間が重なる分の控除が差し引かれます。
逆に会社の退職金を先に受け取った場合は、5年以内のiDeCo受取で控除が重複調整されます。受取の順番と間隔で、控除額が大きく変わるということです。
このルールは条文が複雑で、私も相談のたびに年数要件を一つずつ確認します。自己判断せず、税務署か専門家に試算してもらうのが安全です。
複数回退職金を受け取る場合の勤続期間の重複調整
同じ会社から2回、または転職先からも退職金を受け取る場合、勤続期間が重なっていると、その重複分は退職所得控除の計算から除かれます。両方でフルに控除を使えるわけではありません。
前回の退職金で控除を使った期間は、次回の計算で差し引く。ここを見落とすと、後から納税不足を指摘されることがあります。
受取順序やタイミングで手取りが変わる実例
私が実際に試算した例では、iDeCoを60歳で先に受け取り、会社の退職金を65歳で受け取ると、控除の重複調整で課税対象が膨らみました。受取の間隔を空ける設計に変えただけで、手取りが数十万円変わったケースがあります。
金額は人それぞれですが、「どっちを先に、何年空けて受け取るか」は手取りを左右する大きな論点です。退職の数年前から考え始める価値があります。
退職金の確定申告と翌年の税金
退職金は原則として確定申告が不要です。ただし、ある書類を出し忘れると一律20.42%も源泉徴収され、損をします。ここは絶対に押さえてください。

受給に関する申告書を出さないと20.42%源泉徴収される
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、退職所得控除と2分の1課税が反映され、正しい税額だけが源泉徴収されます。
これを提出しないと、退職金の収入金額に一律20.42%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5.105%)が課されます。本来非課税の人でも引かれてしまうのです。
確定申告で還付を受けられるケース
申告書を出し忘れて20.42%引かれた場合は、確定申告をすれば払いすぎた分が還付されます。多くの人が本来より多く取られているので、必ず申告してください。
また、退職した年の給与が少なく所得控除を使い切れていない場合や、年の途中で退職して年末調整を受けていない場合も、確定申告で他の控除と通算して還付を受けられることがあります。
退職金は分離課税なので翌年の税金には影響しない
退職所得は分離課税です。給与や年金とは合算されず、単独で税額が計算されます。だから退職金を受け取っても、翌年の住民税が退職金分だけ跳ね上がることはありません。
「翌年の住民税が高い」と感じる人がいますが、それは退職前年の給与が高かったためで、退職金が原因ではないケースがほとんどです。住民税は前年所得に対して翌年課税される仕組みだからです。
ふるさと納税・医療費控除と退職所得の関係
退職所得は分離課税なので、ふるさと納税の控除上限額の計算には基本的に含まれません。退職金が多いからといって、ふるさと納税の枠が大きく増えるわけではない点に注意してください。
医療費控除など他の所得控除も、まず給与や年金などの総合課税の所得から差し引きます。控除しきれない分があれば申告で調整できる余地はありますが、退職所得とは別枠で考えるのが基本です。
退職金の手取りを増やすための節税と今後の改正動向

最後に、手取りを実際に増やすための実践ポイントと、これから変わるかもしれない課税の動きをまとめます。退職時期が近い人ほど効いてくる話です。
受取方法の最適化で手取りを増やす実践ポイント
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 申告書の提出 | 「退職所得の受給に関する申告書」を必ず勤務先へ提出する |
| 退職日の調整 | 勤続年数の端数を切り上げられるよう退職日を検討する |
| 一時金と年金の併用 | 控除枠まで一時金、残りを年金に回せないか確認する |
| iDeCo等の受取時期 | 19年・5年ルールを踏まえ受取順序と間隔を設計する |
| 確定申告 | 源泉徴収されすぎや控除の使い残しがあれば申告して還付を受ける |
このうち効果が大きいのは、申告書の提出と受取時期の設計です。前者は出すだけ、後者は数年前からの準備が要ります。
定年・自己都合・早期退職優遇での税負担の違い
税金の計算ルールは、定年退職でも自己都合でも早期退職優遇でも同じです。退職理由で税率が変わることはありません。
違いが出るのは退職金の金額と勤続年数です。早期退職優遇で割増があれば、その分課税退職所得も増えます。優遇の手取りベースでの上乗せ額を、税引き後で比べるのが正解です。
今後は退職金への課税が強化される可能性
政府の税制議論では、勤続20年を境に控除が手厚くなる現行ルールの見直しが繰り返し話題に上っています。終身雇用を前提にした制度設計だからです。
まだ確定した改正ではありません。ただ、将来的に控除や2分の1課税が縮小される可能性は意識しておいた方がいい。受取時期を選べる人は、最新の税制改正大綱を毎年チェックすることを勧めます。
よくある質問(FAQ)
よくある質問
退職金は税制上かなり優遇されています。だからこそ「申告書を出す」「受取時期を設計する」という一手間で、手取りが数十万円単位で変わります。退職日が決まる前に、自分の控除額と課税退職所得を一度計算してみてください。

