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退職金の税金計算をわかりやすく解説|控除・手取り早見表つき

榎本 達也 / 更新:2026-06-24
退職金の税金計算をわかりやすく解説|控除・手取り早見表つき
退職金にいくら税金がかかるのか、手元にいくら残るのか。ここが分からないまま退職日を迎える人は、本当に多いです。先に結論を言います。退職金は税金がかなり優遇されていて、「退職所得控除」と「2分の1課税」のおかげで、給与に比べて手取りはぐっと多く残ります。

この記事では、退職所得控除の計算式から、所得税・住民税・復興特別所得税の出し方、ケース別の試算、手取り早見表までを順番に追えます。元銀行員でFPの私が、実務で何度も使ってきた計算手順そのままで解説します。

特に見落としがちな「退職所得の受給に関する申告書」の提出忘れと、iDeCoや企業型DCを同時に受け取るときの順番。この2つは手取りを大きく左右するので、後半で厚めに書きました。

退職金の税金計算とは?まず知っておきたい基本

退職金の税金はいくら?計算方法を解説【実はほとんどかからない】
退職金の税金はいくら?計算方法を解説【実はほとんどかからない】

退職金は、給与や賞与とは別枠で計算されます。国税庁も、退職所得は原則として他の所得と分離して所得税額を計算する、と明記しています。

なぜ分けるのか。長年働いた対価を一度に受け取るものだから、まとめて高い税率をかけたら酷だ、という考え方が背景にあります。だから優遇が手厚い。

退職金にかかる3つの税金(所得税・住民税・復興特別所得税)

退職金にかかるのは、所得税・住民税・復興特別所得税の3つです。

所得税は課税退職所得金額に税率をかけて控除額を引いて出します。復興特別所得税は、その所得税額に2.1%を上乗せします。住民税は退職所得に対して10%です。

退職金にかかる3つの税金
税金の種類計算のしかた
所得税課税退職所得金額×所得税率-控除額
復興特別所得税所得税額×2.1%
住民税退職所得×10%(市町村民税6%+都道府県民税4%)

住民税の内訳は、市町村民税6%と都道府県民税4%。この10%は、給与のように翌年に分けて払うのではなく、退職金からその場で徴収されます。

退職金の税金が優遇される理由

優遇の正体は2つです。退職所得控除と、2分の1課税。

退職所得の金額は「(収入金額-退職所得控除額)×1/2」で計算します。控除でまず差し引き、その残りをさらに半分にしてから税率をかける。二段構えで税負担を軽くする仕組みです。

(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額(国税庁)

退職所得控除額より少ないときは非課税になる

退職金が退職所得控除額に収まれば、税金はかかりません。

たとえば勤続15年なら控除額は600万円。退職金が600万円以下なら、退職所得はゼロ、つまり所得税も住民税もかかりません。実務でも、中堅で勤続を終える方はこのラインで非課税になるケースをよく見ます。

退職金の税金計算の流れを4ステップで解説

計算は、退職所得控除 → 2分の1課税 → 税率適用 → 復興特別所得税 → 住民税、の順に整理できます。この流れは国税庁と金融機関の解説で共通しています。

退職金の税金計算の流れを4ステップで解説

いきなり全部を一度にやろうとすると混乱します。私はいつも4ステップに分けて電卓を叩きます。

ステップ1 退職所得控除額を計算する

まず勤続年数から控除額を出します。

勤続20年以下は「40万円×勤続年数」。20年超は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」。最低でも80万円が控除されます。

ステップ2 課税退職所得金額を求める(2分の1課税)

退職金から控除額を引き、残りを2分の1にします。これが課税退職所得金額です。

千円未満は切り捨てて計算します。ここで半分になるのが効いていて、最終的な税額がぐっと下がります。

ステップ3 所得税・復興特別所得税を計算する

課税退職所得金額に所得税率をかけ、控除額を引きます。出た所得税額に2.1%を足したのが復興特別所得税です。

所得税率は課税退職所得金額の大きさで段階的に変わります。金額が大きいほど高い率の区分に入ります。

ステップ4 住民税を計算する

最後に住民税です。課税退職所得金額に10%をかけるだけ。

内訳は市町村民税6%+都道府県民税4%。退職金支払時に源泉徴収されるので、自分で後から納める手間はありません。

退職所得控除額の計算と勤続年数の注意点

控除額は勤続年数で大きく変わります。20年を境に計算式が切り替わるのが最大のポイントです。

退職所得控除額の計算と勤続年数の注意点

そして勤続年数の数え方。ここで損をしている人を、相談現場で何度も見ました。

勤続20年以下と20年超で異なる計算式

20年以下は1年あたり40万円。20年を超えると、超えた分は1年あたり70万円に増えます。

勤続年数別の退職所得控除額
勤続年数計算式控除額の例
20年以下40万円×勤続年数勤続15年=600万円
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)勤続30年=1,500万円

長く勤めるほど1年あたりの控除が増える。長期勤続を税制が後押ししている形です。

1年未満の端数は切り上げて計算する

勤続年数は、1年未満の端数があれば切り上げます。

日本郵便の解説でも「たとえ1日でも1年」と説明されています。たとえば勤続20年1か月なら、21年として計算する。これだけで控除額が70万円増えます。

正直に言うと、退職日を1日ずらすだけで端数が切り上がるケースもあります。退職時期を選べる立場なら、ここは一度計算してみる価値があります。

障害が原因で退職した場合の控除上乗せ特例

障害者になったことが直接の原因で退職した場合、通常の退職所得控除額に100万円が上乗せされます。

勤続が短くても適用されます。該当しそうなときは、勤務先や年金事務所に必ず確認してください。

「2分の1課税」が適用されないケースに注意

いくら引かれる?退職金の税金計算
いくら引かれる?退職金の税金計算

退職金の優遇の柱である2分の1課税。これが使えない、あるいは制限される場合があります。

主に「特定役員退職手当等」と「短期退職手当等」の2つ。知らずにいると、想定より手取りが減ります。

特定役員退職手当等とは

役員等としての勤続年数が5年以下の人が受け取る退職金は、特定役員退職手当等として2分の1課税が適用されません。

短い在任で多額の退職金を受け取る役員への、いわば優遇の打ち切りです。

短期退職手当等と2022年税制改正

勤続5年以下の退職金には、2分の1課税の制限があります。

具体的には、退職所得控除を引いた後の金額のうち300万円を超える部分には、2分の1課税が適用されません。これは2022年からの取り扱いです。

300万円までの部分は従来どおり半分にできる。短い勤続でまとまった退職金を受け取る人は、この線引きを意識してください。

退職所得の受給に関する申告書を出さないと20.42%

ここが一番の落とし穴です。

「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出さないと、退職所得控除が使われません。支払金額の20.42%が一律で源泉徴収されてしまいます。

この20.42%は、所得税20%に復興特別所得税2.1%を上乗せした率です。控除も2分の1課税も無視されるので、本来ならゼロ円のはずの人からも税金が引かれます。

払い過ぎた分は確定申告で取り戻せます。ただ、手間も時間もかかる。退職前に必ず申告書を出してください。これだけは絶対に忘れないでほしい。

【ケース別】退職金の税金計算シミュレーション

言葉だけでは実感が湧きにくいので、3つのケースで実際に計算します。いずれも申告書を提出済み、通常の退職手当として2分の1課税が適用される前提です。

【ケース別】退職金の税金計算シミュレーション

控除額の計算と2分の1課税のかかり方を、数字で追ってみてください。

一時金600万円・勤続15年の場合

勤続15年の控除額は40万円×15年=600万円。

退職金600万円から控除600万円を引くとゼロ。退職所得は発生せず、所得税・住民税ともに非課税です。手取りは600万円まるまる残ります。

一時金1,000万円・勤続20年の場合

勤続20年の控除額は40万円×20年=800万円。

1,000万円-800万円=200万円。これを2分の1にして課税退職所得は100万円。ここに所得税率(5%)をかけ、復興特別所得税と住民税10%を加えても、税負担は十数万円ほどに収まります。給与で1,000万円受け取る場合とは、手取りがまるで違います。

一時金2,000万円・勤続30年の場合

勤続30年の控除額は800万円+70万円×(30-20)=1,500万円。

2,000万円-1,500万円=500万円。2分の1にして課税退職所得は250万円。所得税率10%の区分に入りますが、それでも全体の税負担は退職金額に対してかなり軽い。長期勤続の優遇が効いている典型です。

正確な税額は端数処理や年度の税率で前後します。実際の数字は、勤務先の試算か自動計算ツールで必ず確認してください。

退職金の手取額早見表

控除額と課税退職所得の関係を、ざっくり一覧にしました。退職金が控除額の枠内なら非課税、という感覚をつかむための目安です。

勤続年数別・退職所得控除と非課税ライン
勤続年数退職所得控除額この金額までは非課税
10年400万円400万円
15年600万円600万円
20年800万円800万円
25年1,150万円1,150万円
30年1,500万円1,500万円
35年1,850万円1,850万円

自分の勤続年数の行を見て、退職金がその金額を超えるかどうか。まずはそこから判断してください。

退職金の受け取り方で変わる税金と手取り

退職金は、一時金で一括か、年金で分割か、あるいは併用か。受け取り方で税金の種類も手取りも変わります。

退職金の受け取り方で変わる税金と手取り

一時金は退職所得、年金は雑所得。課税の仕組みが根本的に違うので、ここは丁寧に見ていきます。

一時金として一括で受け取る場合

一括受け取りは退職所得として課税されます。退職所得控除と2分の1課税が使えるのが最大の利点です。

控除額の枠が大きい人ほど、一時金のほうが有利になりやすい。多くのケースで、税負担だけ見れば一時金に軍配が上がります。

年金として分割で受け取る場合(公的年金等控除と雑所得)

年金形式で受け取ると、毎年の受取額は雑所得になります。

ここには公的年金等控除が使えます。ただし、受け取り中の運用益が上乗せされることや、所得が増えることで社会保険料や医療費の自己負担に影響する点に注意が必要です。

年金受取は据置期間の運用で総額が増える可能性がある一方、税・社会保険料の負担も毎年かかる。手取りの良し悪しは一概に言えません。

一時金と年金を併用する場合

制度によっては、一部を一時金、残りを年金で受け取れます。

私が相談で勧めることが多いのは、退職所得控除を使い切る金額までを一時金で受け取り、残りを年金にする形。控除の枠を無駄なく使えるからです。ただし制度ごとに選べる割合が決まっているので、勤務先の規程の確認が先です。

iDeCo・企業型DCと退職所得控除の受け取り順序

ここは要注意です。退職金とiDeCo・企業型DCを一時金で受け取ると、退職所得控除が重複して使えないことがあります。

受け取る順番とタイミングで、控除をフルに使えるかどうかが変わります。一般に「5年ルール」「19年ルール」と呼ばれる期間の空け方が関わってきます。

正直、ここは個別性が高くて一律の答えがありません。複数の一時金を受け取る予定がある人は、受け取り時期を決める前に税理士かFPに相談してほしい。順番を間違えると、数十万円単位で手取りが変わることがあります。

確定申告が必要なケースと還付を受けられるケース

これが結論です!5年ルールが消えた後に最もお得に退職金を受け取る方法について解説します!
これが結論です!5年ルールが消えた後に最もお得に退職金を受け取る方法について解説します!

退職金を受け取るだけなら、原則として確定申告は不要です。申告書を出していれば源泉徴収で完結します。

ただし、申告した方が得になる人がいます。ここを見落とすと、戻るはずのお金が戻りません。

確定申告が不要な場合・必要な場合

申告書を提出し、源泉徴収が正しく行われていれば、退職金については申告不要です。

一方、年の途中で退職して年末調整を受けていない場合や、他の所得と合わせて精算したい場合は、確定申告で清算します。

申告書未提出で還付を受けられるケース

前述の20.42%が源泉徴収された人は、確定申告で払い過ぎを取り戻せます。

本来は控除と2分の1課税で税額がもっと少なかったはず。その差額が還付されます。申告書を出し忘れた心当たりがある人は、退職した年の源泉徴収票を必ず確認してください。

死亡退職金と相続税の関係

亡くなった人に支給される死亡退職金は、退職所得ではなく相続税の対象になります。

所得税の退職所得控除とは別の話なので、混同しないでください。法定相続人がいる場合は相続税の非課税枠が使えます。扱いが大きく異なるため、該当時は専門家への相談をおすすめします。

退職金の手取りをふやすための実践ポイント

最後に、手取りを少しでも多く残すための実務的なポイントを整理します。

退職金の手取りをふやすための実践ポイント

私が相談で必ず確認する3点は、申告書の提出・勤続年数の端数・複数一時金の受け取り順序です。

受け取り方の選び方と社会保険料負担の比較

一時金は退職所得控除と2分の1課税が使えて、社会保険料の対象にもなりません。

年金受取は毎年の所得が増え、社会保険料や医療費の負担に響くことがあります。下の表で違いを押さえてください。

一時金と年金の課税・負担の違い
項目一時金年金
所得区分退職所得雑所得
使える控除退職所得控除+2分の1課税公的年金等控除
社会保険料への影響対象外所得増で影響しうる
受取中の運用なし据置運用で増える可能性

私の感覚では、控除の枠内に収まる退職金なら一時金が無難。年金にする魅力は据置運用次第ですが、その分の税・保険料負担を冷静に天秤にかけるべきです。

失敗しやすい注意点とよくある質問

一番多い失敗は、やはり申告書の提出忘れ。次に多いのが、iDeCoと退職金を何も考えずに同じ年に一括受け取りしてしまうケースです。

どちらも事前に手を打てば防げます。退職が見えてきたら、源泉徴収の段取りと受け取り時期を先に決めておく。それだけで手取りは守れます。

よくある質問

退職金の税金計算とは?
退職金を「退職所得」として、給与など他の所得と分けて税額を計算することです。退職所得控除を引き、残りを2分の1にしてから所得税・復興特別所得税・住民税を計算します。控除が大きく、税負担が軽くなる仕組みです。
退職金の税金計算の費用は?
計算自体に費用はかかりません。勤務先が源泉徴収してくれるため、申告書を提出していれば自分で手続きする手間もありません。複雑なケースでFPや税理士に相談する場合のみ、相談料がかかることがあります。
退職金の税金計算の始め方は?
まず勤続年数から退職所得控除額を出します。20年以下は40万円×勤続年数、20年超は800万円+70万円×(勤続年数-20年)。退職金がこの控除額以下なら非課税です。超える場合は、超えた分を2分の1にして税率をかけます。
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榎本 達也

榎本 達也

2級ファイナンシャル・プランニング技能士 ・ 地方銀行での個人資産相談業務12年

元銀行員・現FPとして、退職金や年金まわりの税務を中心に相談業務と記事執筆を行っています。制度の条文や国税庁の通達を直接確認しながら、読者が実際に使える情報だけを届けることを心がけています。

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